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道路は分譲地内の共有地で、市役所がうるさく言うことがない。
そんなこともあって、杉田の家の前には、
錆びた自転車や壊れた農機具などが山のようにつまれていて、
車は通れなくなっていた。
「気をつけろよ」
背後から、押し殺した住人の声がした。
杉田の家は、かつては大きな農家だった。
団地に変わった周辺の土地の多くは、昔は杉田家のものだ。
高度経済成長で住宅が農村部にまで広がり、
杉田家は田畑を売って豊かになった。
そして、仕事を忘れ、消費するだけの家になった。
杉田は傲慢になって事件を起こすことが多くなり、
その賠償や、もみ消しに金を使った。
「残ったのは、この小さな家だけだ」
王寺は40坪ほどの洒落たコンクリート造りの家を見上げた。
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