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「私を殺すか……」
「おうよ。お前を殺して、ワシも死ぬ。
ワシが作ったものだ。ワシの手で消してやる。
そうすれば、誰も文句を言うまい」
「そんな理屈があるか!」
王寺は大声を上げて立ち上がりかけたが、
ふと思い直して座りなおした。
「私の死期は近い。親父の手で死ぬのも悪くはないだろう」
王寺は作務衣の前を開いた。
ここを刺せとばかりに……
杉田は酔いが醒めた。
いや、醒めてはいないが、理性は目覚めた。
「死期が近いとは、どういうことだ?」
「なんだ。少しは父親らしい気持ちが芽生えたか」
「嘘なのか……」
「嘘など言うものか。あんたは世間のことを知らないから教えてやろう。
世の中には『制裁アプリ』というものが出回っている。
それで、若者は、気に入らない奴を制裁する」
「制裁?」
「相手の写真と罪をインターネット上に登録すると、殺すことができるそうだ」
「そんなことで、他人を殺せるというのか?」
杉田は納得がいかないという表情をつくった。
「そうだ。写真を撮って『制裁アプリ』というものを使って送るだけらしい。
沢山、撮られた者は死んでしまう。
年寄りはスマホを使わないから、あまり知らないが、
若者はそれで殺しあっている」
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