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「お前も若者の仲間入りというわけか?」
「私は若くはないが、私が講演をするところの子供たちも、私の娘たちも若い。
私の写真を撮って送っているようだ」
「馬鹿な! どうして止めさせない」
「子供たちが止めたところで、他の誰かが私を殺すだろう。
私は有名人だからな」
王寺は口元をゆがめた。
「たかだか坊主が、有名人であるものか。
お前が止めないというなら、俺が止めてやろう」
歩き出した杉田のベルトを王寺はつかんで止めた。
「娘を……善春を、あんたは止められるのか?」
杉田は、鬼のような形相で見上げる王寺を見下ろした。
「私は知っているぞ。
善春もまた、あんたの子供だ」
雷にでも打たれたように、杉田は座り込んだ。
欲望のままに暮らしてきたから、
誰が自分の血を分けた子供だとか、
普段は考えることはなかった。
愛情もない。
だからといって、自分の血を分けた子供だと分かっている相手に、
刃を向ける覚悟はなかった。
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