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「指輪作る」
抱き締められたまま言った。
「指輪?」
「あたしと博己で同じやつ」
「それって、ペアリング?」
「そうだよ」
「嬉しいな」
「でも、ごっついのになるよ。博己に全然似合わないの。あたしの好み優先だからね」
「その方がいい。いつもエリカを感じられる」
「あと、髪の毛、またシルバーに戻そうかな」
「僕も見てみたいけど、あの会社じゃ無理だよ」
「あたし今のバイト辞める。次のとこ決めてから」
「どうして!?」
声が大きくなったのと同時に、体が離れた。
私を見つめる瞳に、一抹の不安がよぎる。
「勘違いしないで。あの人が居なくなるからじゃない。あたし考えたんだ。今の所で働く必要性を。自分を偽ってまで続けるのも馬鹿らしくなっちゃったしさ。時給が低くても、やりたいことに少しでも近づけるバイトのほうが、自分らしいって思った」
「そうだね。その方がエリカに向いてると思うよ。僕も応援してる。エリカに毎日会えないのは寂しいけど」
「そのためのペアリング。はめてれば頭の中で逢えるでしょ。………あ、そっか、博己は仕事中つけれないか。結婚指輪じゃないしね」
「外回りの時だけ外すよ。それ以外は、つける。上司に怒られたら、その時に考える」
「忙(せわ)しないね。なくさないでよ」
「絶対なくさないよ」
「あとね、辞める理由が、もうひとつあるんだ」
「それはなに?」
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