7人が本棚に入れています
本棚に追加
「事件の概要から考えると、近親者の線は考えられないわね」
真理はメビウスの10ミリをスッと口にくわえるとライターで火を点けて喫い始める。
「では通り魔的な猟奇殺人でしょうか」
「飛躍し過ぎかな。そもそも赤井さんが殺害された時刻には同僚はこの店にいたのよ。近親者には全員アリバイがあるんだもの」
確かに事件の夜は赤井の同僚はnew moonの店内にいた事を同僚達は証言している。
手口から考えて店から外に出て、あれだけの犯行を行うのには時間は掛かる故、発見者が犯人であるとも真理は考え難かった。
「店に来ていない彼女の同僚とは考えられないですかね?」
「どうして?」
真理は煙草の灰を分厚い硝子の灰皿に落とした。
「彼女はブランドショップでは業績がトップクラスの社員と訊きます。給料も良くここにもよく足を運んで下さる方ですし、それで彼女の出世をよく思わない一部の同僚が殺害したというのも考えられます」
「悔しいとは思うだろうけど、殺したいとまではいかない動機ね」
真理は静かに首を横に振った。
最初のコメントを投稿しよう!