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「じゃあ間違いが多かったところを解説して行くぞー。 訂正ノートは月曜に提出すること」
全員の答案用紙を返し終えた原先生が黒板に向かった。
流石は特クラ(特進クラス)と言うべきか、解説は最小限で終わり、残り時間は自習となった。
私は当然その解説だけでは全然足りず、必死に訂正ノートを作成していた。
今日は金曜日。
土曜日は友達と遊ぶ約束をしている。
日曜は他の教科の宿題もある。
この自習時間のうちに少しでも負担を減らしておきたかった。
「うぅ……深山君の頭脳が欲しい……」
思わずそう零した時だった。
「いいよ」
聞く逃しそうな小さな声。
聞き間違いかな?
「放課後教えようか?」
今度はもう少しはっきり聞こえた。
私は半信半疑で後ろの席を振り返った。
黒縁眼鏡の奥の瞳がこちらを見ていた。
まともに視線があったの初めてかもしれない。
地味なだけかと思っていたが、よく見ると案外端正な顔をしていた。
「で、どうするの?」
「あ、えっと、お願いします」
私は慌てて思わず敬語で答えてしまった。
放課後、人の少なくなった教室で私はそっと後ろを向いた。
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