【3】夏祭り

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*** 夏祭りの屋台のある場所から、少し山道を登った所に、その『特等席』はある。 浴衣に下駄姿で歩くのは、実はちょっと厳しい道のりではあるけど。 「奈々、転ばないようにゆっくり歩けよ? 俺の手しっかり握ってろよ?」 「うん、ありがとう。」 お兄ちゃんが、優しく手を握っていてくれるから。 その道のりは、全然苦にならないんだ。 ……芝生みたいに、短い丈の草が所々に生えた地面に、私とお兄ちゃんは腰を降ろした。 「やっぱり、この“特等席”に来ると、何か落ち着くよなぁ。」 「そうだね~。」 浴衣姿で歩いて、更に体が熱くなったから。 手に持ったかき氷を、私は一口スプーンですくって、口に含んだ。 口中が、いちごと練乳の甘い風味で満たされていき、それと同時に体の熱が和らぐのを感じた。
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