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「山内くん…」
エレベーターに向かう途中で後ろから声をかけられた。
自分と一緒に試験を受けた人たちは、
ボクがトイレに行っている間にエレベーターに乗ってしまったらしい。
一人で歩く廊下がとても寂しかった。
「はい。」
忘れ物でもしただろうか…
そう思いながら返事をして振り向くと、
さっきまではきっちりしていたネクタイが曲がっていた。
窮屈で緩めずにはいられなかった…と言うような曲がりっぷりに
思わず顔が綻んだ。
こんなにネクタイが似合う年になっても…
ネクタイを緩めたくなる瞬間がある事に…
「キミ…Y大なんだってね。」
「はい」
「高校は…?」
「聖尽学園高等学校です。」
「そっか…」
この短い会話の中で、就職課の先生の言っていた人が
この人だと察知した。
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