18/34
前へ
/88ページ
次へ
「山内くん…」 エレベーターに向かう途中で後ろから声をかけられた。 自分と一緒に試験を受けた人たちは、 ボクがトイレに行っている間にエレベーターに乗ってしまったらしい。 一人で歩く廊下がとても寂しかった。 「はい。」 忘れ物でもしただろうか… そう思いながら返事をして振り向くと、 さっきまではきっちりしていたネクタイが曲がっていた。 窮屈で緩めずにはいられなかった…と言うような曲がりっぷりに 思わず顔が綻んだ。 こんなにネクタイが似合う年になっても… ネクタイを緩めたくなる瞬間がある事に… 「キミ…Y大なんだってね。」 「はい」 「高校は…?」 「聖尽学園高等学校です。」 「そっか…」 この短い会話の中で、就職課の先生の言っていた人が この人だと察知した。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

301人が本棚に入れています
本棚に追加