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「体には…気を付けてね。」 お決まりの文句で電話を切った母親の声を 名残惜しく思い、携帯電話を見つめる。 就職が決まった。 東京の出版社なので、 地元に帰る事は無いだろう。 もう、一緒に暮らすことも…無いと思えば思うほど、 もっと学生の時に帰っておけば良かった…と思う。 過ぎてから思うものだ。 だから後悔は…苦いのかもしれない。 3つ年上の兄貴は、 建築関係の勉強をし、 大手建設会社にでも就職するかと思ったら、 県職に収まった。 建設部都市計画課勤務と聞いているが、 全然見当もつかない仕事をしていると思う。 何故県職?と思ったら、 同じ県内だったら、親に何か有った時にすぐ駆けつけられること、 隣市にある建設事務所維持管理課に異動すれば 介護が必要になった時も何とかなると思ったらしい。
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