1.ベビーシッターはじめます!

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夏月の情緒不安さが晴樹に伝染したりしないか。 衣食住を得たことで、晴樹の世話を疎かにしないか。 夏月の行動、そのときの感情。 「だぁっ、はー」 「私は…」 (… 簡単な気持ちで、他人に自分の子供を預けたり、一緒に住まわせたりしないよね。私のすべてがそのまま、はるくんに反映されちゃうんだ) 晴樹と同い年くらいで天国に行ってしまった妹を思い出し、胸が切なく疼いた。 「私は…はるくんの栄養素になります!」 「へ?」 夏月が胸の前に拳を効かせると、その迫力におののいたのか、恭賀は肩を竦めた。 それも構わず、お腹に力を込めると一気に吐き出した。 「ぷにぷにほっぺは元気のバロメーター! 女の子の笑顔が糖分なら、私の笑顔だってはるくんの栄養になりますよね!?」 「…」 「あ、れ…? もしもし?」 ポカーンと口を開けた恭賀に、じわりと頬が熱を持つ。 (私…な、なに言ってるんだろう。これじゃあ、ただの痛い奴じゃない!?) 「こ、これじゃ、納得できませんか…?」 ぐっと言葉に詰まり、当初の勢いはどこへやら。 言葉の末端では、頭の中に寝袋生活が思い描かれ、拳は不安げな口元を隠す役割に変換されていた。 「…カカオでいう何%?」 「カ…カオ? カカオってチョコレートの原料になっているあの…?」 (苦い?) 「うん、そう」 「…えーっと、…カカオ30%?」 (30%が苦いのか甘いのか、全然分からないけど…) 首を竦めながらおそるおそる答えると、恭賀はきょとんとしたあと、ぶはっと派手に吹き出した。 「じゃあ、夏月ちゃんはミルクチョコレート女子だね」 「ミルク?? チョコレート??」 (パパさんは甘いものが好きなのだろうか…) もし、そうだとしたら原形をとどめていなかったケーキが悔やまれる。 恭賀の考えは分からなかったけど、 「ぷっ…」 恭賀の笑う姿を見ていたら、徐々に夏月にも笑いが込み上げてきて、初めて二人の笑い声が混ざり合った。 「とりあえず…お試しで三日間お願いしようかな」 (三日間…) うるっ 「…は、はい」
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