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恭賀に構ってもらえないことが不思議なのか 、その大きな瞳をさらにまん丸にさせ、恭賀と夏月の間をキョロキョロと行き来させている。
次第に、顔が強張り出し…
(あぁ、くるくるくる…)
「びぇ…っ」
晴樹の声色が変わった瞬間、夏月は晴樹を抱き上げ、床にしゃがみ込んだ。
「ほ、ほぉら。はるくん、あんよは上手ですよ~。いち、に。いち、に」
脇に手を差し込み立たせると、つたなくもきゃっきゃと歩き出す。
「はーい。あぶぶぶっ」
「あいーっ」
(セ、セーフ…)
胸になだれ込んできては、立たせ、歩かせ…晴樹のご機嫌どりに奔走する最中、じとりと恭賀を盗み見た。
「…っ!!」
↑身悶え続行中。
今の彼を盗み見れない人はいないと思う。
何がツボにはまっているのか、うつむき加減に胸元を鷲掴み、目尻には涙まで浮かべている。
ガバッと身体を起こしたりしていることから見た感じ、…気分は悪くなさそう。
「あ…あの、パ…」
不意に彼の動きが止まった。
「キョンちゃんは男心が分かってない!」
(わっ、怒った!)
心臓がぎょっとするくらいドクンっと脈を打つ。
恭賀の怒声に晴樹が再び泣き出さないか気が気じゃなかったが、晴樹は晴樹であんよに夢中な様子でホッと息を吐いた。
しかし、彼女の腕も万能ではない。
推定9kgを支え続ける夏月の腕力が限界に近づいていることも素知らぬ顔で、恭賀は赤らんだ頬に向けてパタパタと手を振っていた。
(照れたり、怒ったり…忙しそう。部屋が片付かないのって、もしかして…)
ぐるりと室内を見渡しても、行き着く先は視野が携帯一直線の恭賀。
(…うん。絶対にそうだ)
携帯中毒を理由に、ベビーシッターを雇ったとしたら、幼児を預かる身としては見過ごせない!!
まだまだ歩く気満々だった晴樹をベビーチェアーに座らせると、夏月はふんぞり返りながら恭賀の隣に立った。
口をへの字に曲げて腕を伸ばす。
「幼いうちからはるくんまでゲームを覚えたらどーするんですか!?」
「あっ!」
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