2.ご主人さまは何を…?

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晴樹の額に当てていた手を力なく下ろし、ポロポロとこぼれる涙を見て、爪が食い込むほどに手を握りしめた。 振り返れば、兆候はいくつもあった。 『ところで、はるは? まだ寝てるの?』 “お昼ご飯の食べが少なく、寝ていることが多かったです” 『はる~。お前はいつもお風呂入りたてみたいにあったかいなぁ』 「…私が来たことで、はるくんの生活リズムが乱れてたのかも」 「あぁ。だから、身体熱かったのか」 高い高いをしたまま、上目遣いに晴樹を見入る。 ちょっと目を見開いてから、何事もなかったかのようにクスッと恭賀は笑った。 「あぁ、って…病院に連れていかなきゃ」 硬い床が豆腐の上にいるようで、一瞬でも気を抜けば膝から崩れてしまいそうだった。 (きょうだいが体調悪くしたとき、どうしてたっけ…? 保険証? それとも先に病院に連絡すべき…?) よたよたと不審な動きをする夏月の服の袖を、恭賀が引き止めた。 「ちょ、ちょちょ、待った! これくらいの時期の熱なんて日常茶飯時でしょ。多少、熱があろうがこの通りピンピンしてるんだから、もう少し様子を見ても…。これで病院に行ってたらキリないよ」 「でも…!」 恭賀の胸元を掴み、親指をはむはむする晴樹を見入る。 熱があると分かってから、さらに顔が赤い気がする… 「…家族を失ったからって、ちょっと過剰反応し過ぎじゃない?」 「過剰反応?」 「はるの父親は俺だよ? キミが俺たちの何を知ってるって言うの?」 「…!」 その一言に、妙に頭の中がさっぱりして、さらに奥のほうで何かの切れる音がした。 「なんともないならないに越したことないじゃないですか! パ…パパさんたちの何を? そんなの、聞かないよう言ったのパパ さんじゃないっ。他に行くところがないのに、詮索なんてできません…っ」 目の奥がじわりと濡れるような感じがして、それを堪えると言葉がつかえてしまった。 「守れるものがあるだけいいじゃないっ! 私は…っ」
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