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お父さん、お母さん、
七生、真生、花ちゃん…
(どうして、私だけ一人ぼっちにしたの?)
「私にはっ、なにもない!!」
自分の非力さを悔やむか。
守るものがないことを恥じるか。
「失って後悔しても遅いんです!」
長距離を走ったあとのように息が上がる。
呆気に取られ、ぽかん…と開けたまん丸な口を涙の滲む目で睨みつけたところでハッと我に返った。
(お…怯えさせてしまった)
「ええ、偉そうなこと言ってごめんなさいっ」
「偉そう…。いや、あ…明日になっても熱下がんなかったら病院連れていくよ。ほ、ほら、コイツのかかりつけの小児科、今日は休みだし。この時間帯だとどこも時間外で診てくれるか分からないし…」
「そ、そうですよね。念のため、今日はお風呂やめときます」
「だね。そのほうがいいかも」
にこっ。
にこ。
(気まずい…)
互いに顔を合わすのを避けながら、そそくさと会話を終えた。
直後、沈黙と沈黙の間に晴樹が指をしゃぶりながらゲップをひとつした。
「はる? もう寝るか?」
「あ…じゃあ、私、寝かしつけて…」
ゲロゲロ~
(吐いた!?)
「はーるぅ!?」
ゲロゲロゲロ
「わっ、ズボンが!! ちょちょちょ、とりあえずどーしたらいいの!? ティッシュ? タオル!!?」
「わっ、私、タオル持ってきます!」
「できれば急いで!」
「はいっ。えーっと、えーっと」
(こ、これって熱のせいだよね!? 花ちゃんたちが熱で吐いてたとき、お母さんどうしてたっけ~!??)
「えーっと、保険証…母子手帳どこだっけ」
パタパタと忙しく部屋を行き来する恭賀のそばで、夏月は晴樹の目尻に残った涙のあとを不安げに見ていることしかできなかった。
泣き疲れたのか、吐き疲れたのか、それとも熱のせいなのか、晴樹は夏月の腕の中でぐったりと眠っていた。
「ほーら、またそんな顔するー。はるが起きたとき、「そんな顔するなー」ってはるがチョップしたら、さすがのキョンキョンも困っちゃうよ~?」
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