2.ご主人さまは何を…?

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帰宅する会社員などで混んだ歩道をできうる限り急いで歩き、夏月らは大通りへと向かった。 角を曲がった途端、夏月は直進してきた男性と激しくぶつかった。 「夏月ちゃん!」 男性の身体に弾かれて、尻もちをつきそうになったところを、ぎょっと叫んだ恭賀に支えられた。 「…」 「大丈夫?」 「は、はい…ありがとうございます」 やや状況が飲み込めていない頭を振りきり、恭賀の腕を借りて足元をしっかりさせると、謝罪のため男性に深々と頭を下げた。 「急いでいたとはいえ、急に飛び出してごめんなさい。お怪我はありませんか?」 「…」 (…う) 相当、腹を立てているのか、相手からの反応は一切返ってこない。 (も、もしかして、打ちどころが悪くて声すら出ないとか…!? 病院に行くところだから一緒に…) おそるおそる夏月が顔を上げると同時に、恭賀が素っ頓狂な声を上げた。 「サエ!? …あっ、じゃなくて…さえ、き先生…」 「え…?」 (佐伯先生?) ハッとして固まる恭賀の顔は、青白い。 「サエ先生!?」 サエ先生とは、夏月が通う高校の教師だ。 その容姿といえば、癖の強い髪の毛にシワシワよれよれの白衣。それに、いつの時代か分からないビン底メガネがトレードマーク。 …噂では初恋相手は紫式部だと言われている。 (あのっ!?? ) 指をさしそうになって、夏月は慌てて手を下げた。 しかし、彼女とぶつかったのは、癖のある髪を上手く後ろに流した清潔感漂うダンディなイケメン。 メガネもかけてはいるが、ビン底メガネとは似ても似つかないシャープの縁なしデザイン。 縁なしメガネをビン底メガネに変換し、目を皿のようにして佐伯の面影を辿ると… (ホントだ!) 「メガネかけてなかったらわからな―――」 1.年齢問わず(高校生不可) 夏月は、寸前のところで口を塞いだ。 (…パパさんが、どうしてウチの学校の先生を知ってるの!?) 処理しきれない情報がドッと押し寄せる。
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