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朝には晴樹の熱も下がり、嘔吐していたのが嘘のように、もりもりと勧めるスプーンが追いつかないほどの食欲をみせていた。
(これはこれで、皆が元気な証拠だし)
『―――バーカ。まだまだたんねぇーよ。大人しく俺になかされてろ』
「!!?」
「ぬ、うおおおっ…」
(な、なかされてろが、鳴かされてろに聞こえる!!)
携帯から流れてくる過激な内容さながら身悶える恭賀から、夏月は晴樹を連れてテレビの前に避難した。
「あ、あの! 多趣味なのは結構ですがっ、子供に聞かせる内容としてはどうかと思います! 理解はできないと思うけど…はるくんだって男の子だし、ちゃんと聞こえてます!」
晴樹を恭賀から隠すように抱きしめる。
すると、ボイス有りで乙女ちっくゲーム。略して乙ゲーを楽しんでいた恭賀がきょとんと顔を上げた。
キッと鋭く恭賀を見つめてしばらく、きょとんとした顔がみるみるうちに輝いていった。
(え…)
「いいじゃん、いいじゃん。皆でやろーよ。夏月ちゃんも聞いてみ? ハマるよ?」
「いい、いえ、私はけっこ…」
遠慮しますと言う夏月もそっちのけで、夏月の耳に携帯をあてる。
『ふっ…あ…』
“じんわりと疼きを感じた瞬間、口からかすれた吐息がこぼれた”
“そんな私の様子―――”
『もっとだ。もっとな―――』
「もっ、もう、結構です!!」
「ね?」
(ね? じゃなーい!!)
嫌がって恭賀の肩を押し返しているにも関わらず、キラキラと光って見える笑顔が、さらに頬を熱くさせた。
背筋がゾクリと震え、耳元で甘く囁かれた感触がまだ残っている。
「だって、バレちゃったなら隠す必要ないじゃん。イヤホンってけっこう耳痛くなるんだよ? それに、イヤホン使ってると夏月ちゃんが引っかかって壊されそうだしー」
(は、反論できない…!!)
「そーか、そーか。夏月ちゃんはオラニャンに弱い、っと。メモしとこ、メモメモ…あっ! でもでも、真さんはキョンちゃんのだから誘惑しないでよっ」
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