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いつも、にこにこ笑っている恭賀から「離婚してくれたほうがありがたい」と凍てついた言葉を聞いて、初めて恭賀と眞野という存在が結びついた。
それと同時に、彼のひどく複雑な家庭環境が垣間見えた気がして、自然と口にしていた言葉だった。
「夏月ちゃんって、けっこうエグいよね」
恭賀の瞳から一筋の光がこぼれた。
「え…?」
(…睨まれた?)
瞬きをした次には、元の眞野に戻っていて、
それが、気のせい…? と思っても、ニッと口角を上げた恭賀の顔が家とは違って見えた。
「それにぃ、騙すなんて夏月ちゃんには言われたくないなー。高校生はダメって言ったでしょ? お互いさまじゃん」
うぐっ
「結局、初めからパパさんは知ってたんですね」
「あれで気づかれてないって思ってるほうがすごいよ。制服姿を俺に見られないようコソコソはるの支度してるのバレバレだったしー」
「い、いつから私だと…」
「気づいてたかって?」
コクコク頷く。
「夏月ちゃんから電話がかかってきたときー。学校の掲示板使って貼り紙してる時点で不思議に思わないところが不思議。ほら、俺たちって一年のときも割りと席が近くて、クラスの連絡網用に番号を交換してたじゃん? 途中で俺は番号変えちゃったけど」
「…」
「…って、おーい。俺の話聞いてますかー? これだよ、これこれ。ついつい後ろの席から見ててツッコミそうになるのをいつも堪えるのが大変でー。うんうん」
「私…ボケてる?」
「かなり」
(ま、真顔で言われた!)
「ちなみに、夏月ちゃんが焼却炉で見た上級生もサイトで知り合った乙ゲー仲間ね」
「ひぃっ」
ガーン
「いやー、あのときの夏月ちゃん。動きがバネの壊れたおもちゃみたいで面白かったなぁ。あのあと、傷心の先輩たち慰めんの大変だったんだからね」
「しょ…なんで!?」
「なんでときましたかー。ごっつい男が乙ゲーだよ?」
「でも、パパさん言ってましたよね? カッコいいものが好きなだけだって。私があのとき、飛び出しちゃったのは…眞野くんが傷つけられると思ったからで。バラしたりしないよ、私! 絶対、誰にも言わない」
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