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(くぅ~、半べそかいた顔もcute!)
晴樹の泣き声で我に返った(?)恭賀は、足で押さえていたドアを背中で全開にし、夏月を家の中に招き入れた。
「まあまあ、立ち話もなんですから」
「あ、どうもご丁寧に…お邪魔します」
(本当に、こんな豪華な家でバイトができるんだよね…?)
背筋を伸ばし、辺りを気まずげに見渡しながら室内へとお邪魔した。
「どーぞ、どーぞ。ほぉら、はるも男なら泣くな~」
(私もはるくん…トントンしたい)
羨望の眼差しを恭賀に注ぎつつも、
(いいのかな? そんな、簡単に…いいんだよね? お腹に納めたケーキはいったい…)
拍子抜けしてしまいそうになる展開の速さに戸惑いながら、なんだか賑やかな鼻歌を歌う彼のあとについて廊下を進んでいく。
生活の中心部であろう部屋に通され、ベビーシッターを急募している理由をようやく飲み込んだ。
「ああ… 赤ちゃんがいる部屋とは思えません!」
購読済み雑誌×3山盛り(小)
外出用(と思われる)上着×6着(目視)
他、洗濯物(…済み?)×部屋の約6割占領
飲料水(未開封)×5、6…んん??
そのぐちゃらけ~具合に思わず瞬きを繰り返し、声を上げれば、今まさにテーブルの上に山積みになっていた新聞紙が崩れた。
「せ、せめて、広告と新聞紙は別々にして下さい…」
なだれを起こした新聞紙にしがみつき、脱力感に肩を落としながら振り返る。
「 一応、ゴミ出しはしてるし。そのための夏月ちゃんでしょ? じゃっ、俺はシャワー浴びてくるから。早速、初仕事よろしく~」
「初仕事…」
(よしっ、って…部屋の掃除? …挨拶しただけなのに…、採用ってこと? 雇ってもらえることに越したことはないんだけど…)
彼の言葉に呆けて、まじまじと後ろ姿を見つめてしまう。
「… 俺の背中に何かついてる?」
「い、いえ…そうじゃなくて」
「そっ」
言葉を短く切り、ベビーベッドに晴樹を寝かせると、本当に恭賀は風呂場へと行ってしまいそうだった。
慌てて、恭賀を引き止める。
「あっ、えーっと、取りかかる前にお願いがあるんですが…」
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