4.守備陣

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届くボールは全て取りたいーー 三塁を守る彼は足をバタバタと動かし、どんなボールでも反応できるように準備していた。 伝説のライガースの守護神が闘病から帰ってきた、大事な復帰戦。 もうツーアウト。あと一人。 ここでエラーをして失点に繋がるような事があれば守護神の顔に泥を塗ることになる。 彼以外の守備につく全選手がとりあえずエラーだけは避けようと、消極的な考えをしていた。 しかし彼は違う。 彼は積極的にいこうと何度も自分に言い聞かせた。 彼は外国人選手である。 入団当初のプレースタイルは打撃重視で守備は二の次。 彼のそのスタイルが気に食わなかったライガースの監督は、彼を十試合程起用した後、二軍に落とした。 しかしその二軍で、彼の考えを変える選手と出会った。 今マウンドに立っている守護神である。 彼は厳つい見た目のシャイな外国人選手ということもあり中々馴染めず、話しかけてくる人も居なかった。 仲間外れのような形になっていた。 そして二軍に落ちると、さらに周りは避けようとした。 しかしそんな中、守護神だけが話し掛けてくれ、さらにはチームに馴染める方法を教えてくれたのである。 ラビッツの四番打者が三球連続となるフォークボールをバットで叩いた。 鋭い打球。手前で一度バウンドする難しい打球だ。 その打球に彼は飛び付く。 取ったボールをすぐに起き上がりファーストに投げた。 だが審判によってその打球はファールだったと告げられる。 それでも彼はショックを受けず、咆哮を上げて周りを鼓舞した。 「嫌いなことも何事も全力だ。それで馴染めないなら、周りの選手を俺が叱ってやる」 二軍に落ちたばかりの彼に、守護神はそう教えたのだ。 そしてそれを彼は守り続けている。 ライガースの監督はそんな彼のプレーを賞賛し、拍手を送った。 他のポジションに付く守備陣も目の色を変える。 これがこのチームのスピリットだろ? 彼は他のチームメイトに思い出させるように周りを見渡しながら、グローブを叩いて声を出した。 最後に守護神の背中を見る。 「Thank you」 そして小さく呟いた。
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