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現在エース投手の彼も、そんな守護神の影響を大いに受けた投手の一人だった。
二年前まで彼は伸び悩み、一軍にも全く上がれそうになかった。
そんな状況もあり卑屈になっていた彼は、プロ野球選手としての自分に自信が持てなくなり、素行も日に日に悪くなっていたのである。
いつ解雇されてもおかしくはないという球団関係者の声は、彼の耳にも入ってきていた。彼を知る全ての人が同じ様に思っていたのだ。
しかしながら、プロ失格の烙印を押されかけていた彼を救う人物が突如として現れる。
それが今からマウンドに立つ守護神だった。
「お前、自分が自分に諦めてどうする」
ベンチに戻ったエースは過去に守護神に掛けられた言葉を思い出し、その通りだ、と小さく笑う。
さらに彼は、
「それでも自分に自信が無いなら俺を信じろ。お前は必死に練習すれば良い投手なる。間違いない」
と続けて言われたことも思い出した。
その言葉に彼が震え、揺さぶられ、その日から血眼になり練習に打ち込んだことは言うまでも無いだろう。
懐かしい思い出に浸る彼の耳に、さらに懐かしい入場曲が入ってくる。
それはライガースに守護神が帰ってきたことを意味していた。
球場全体が敵味方関係無く、どよめき半分歓声半分の反応を示す。
異様な球場の雰囲気に包まれながら、守護神はマウンドに立った。
エースは自らの両手を組むように重ねる。
それはここまで自分が投げてきた試合をなんとか勝利に結び付けてくれ、と祈る為ではない。
守護神の復活が見たい。
そんな思いからだった。
「すまんな」
監督が彼にだけ聞こえるような声で言う。
「気にしないでください。僕もこの対決が見たかったですから」
それは本心だった。
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