4人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
彼は守護神を見ながら、捕手を威嚇するように尋ねた。
捕手は答えない。
サインに守護神が首を縦に振る。
そして投げたボールはまたしてもフォークボールだった。
しかしストライクゾーンから大きく外れる。
そのボールを見て遂に彼は憤った。
この若い捕手はなにも分かってはいない。
あいつの武器はストレートだろうが。
彼はそんな風に思いながらもちょっと待てよ、と考え直す。
彼は打席を外しバットを振りながら、捕手の気持ちを推測した。
この捕手だって守護神がストレートを最大の武器としていた投手だという事を知っているはずなのだ。
なのにストレートを使わないという事はーー
「ちくしょうっちくしょうっ」
そこまで考えた彼はバットを振りながら、何度も呟く。
悔しかったのだ。彼は昔のような勝負を心待ちにしていたのである。
さらに彼は悔しさと同時に、なんとか打ってやらなければとも感じていた。
もし四年前のストレートが投げられないというのなら、この守護神はプロでは通用しないということになる。
そうなれば誰かが引導を渡してやらなければいけない。しかしライバルとして格好も付けてやりたい。
それは日本一の打者である自分にしか出来ない仕事だと彼は理解したのだ。
「ちくしょう……」
彼はバッターボックスに入り、腕組みをしているライガースの監督を睨む。
ここで登板させる決心をした相手チームの監督を、彼は心底憎んだのだ。
最初のコメントを投稿しよう！