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 天窓から差し込む光は柔らかだが、それはここが図書館という居心地のいい温度に設定されている空間だからだ。表に出れば誰もが顔を顰めたくなる暑さを太陽は生み出している。  遠流(とおる)はラウンジのベンチに座り、天井をボンヤリと見上げていた。  側には新聞や雑誌の置かれている棚がある。前後の通路を通る人は多く、大半の者達が、遠流に訝しむような眼差しを向けてきている。  どうしてなのかは察しが付いている。おそらくは遠流の格好に問題があるのだろう。  下に穿いているのがデニムのパンツなのはともかく、真夏なのに白いパーカーを羽織っている。  さらには首や手首、手の平や指先など、顔以外の露出している肌は、全て包帯で覆い隠していた。  しかしそんな不気味な姿であるにも関わらず、一方では近付いてくる者達もあとを絶たない。  全員が若い少女だという共通点がある。  しかも頬を赤らめ、瞳は潤み、呼吸も荒くなっている。  現在のこの状況が異常であり、同時に仕方がないのだということも、遠流は理解できていた。  これは自分が身に付けた能力の影響なのだから。  げんなりとしつつ、遠流は何度目になるかもわからない台詞を頭の中で呟く。    俺はいったい、いつまで俺でいることができるんだろうな?