SCENE 2
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SCENE 2

 遠流がアンダーグラウンドサイトで見た情報によると、ウィザードと思わしき人物は一番大きなアーケード街に姿を現したらしい。  問題なのは、ウィザードという単語こそ使用されていたが、ゲームなどでは当たり前のように出てくる名称である以上、遠流の求める《あのウィザード》である可能性は限りなく低いということだ。  それでも確かめなければならない。  当てのない者を捜さなければならない運命を嘆きたいところだが、そんなことをしている暇すらない。  遠流に残されている時間は、本当に僅かだけなのだから。  目的のアーケード街へたどり着いたのは、太陽が完全に沈むのとほぼ同時だった。  たくさんの人達で混み合い、無秩序な流れが生み出されている。  真っ直ぐに歩くのも難しい状況に、遠流は顔を顰める。  本当はこんな場所などすぐにでも立ち去りたかった。しかしワガママを言っていられるだけの余裕がない。  ため息をつきつつも、ウィザードの姿を捜す。  そんな遠流の側に、たくさんの少女達が引き寄せられてくる。  まるで街灯に群がる虫達のようだ。  ただでさえ混雑した道が、さらに狭く感じてしまう。  遠流の側にいる少女達は、一様に頬を紅潮させていた。  能力の作用なのだから仕方がないことだといえ、人間としての理性を失いつつある彼女達を見るのが、遠流はあまり好きではなかった。  遠流の体から発せられている匂いは、餌となる条件に見合った者達を、強烈に引き寄せてしまう。  その条件とは、処女であるということ。  独特な匂いを感じ取った処女は、どういうわけか脳内麻薬を過剰に分泌させられる。  一瞬で恍惚状態に陥ってしまう。もっと嗅ぎたいという欲求に堪えられず、遠流に近付いてくる。  まさか喰べられるとは思いもせずに。  遠流と同じような存在ならば、匂いにつられてやって来た彼女達を、悦んで喰らうのだろう。  だが、遠流は決してそんなことはしない。  遠流はまだ、自分のことを人間だと思っている。  人が人を喰べようとするわけがない。  体がすでに人間ではなくなってしまっている遠流にとって、それだけが唯一、自分が人間だと信じる為に残された支えなのだから……。