II. 夜

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ー 放課後。 今日から部活の体験入部だ。 俺と水沢は、女子しか見当たらない吹奏楽部へ向かった。 歩いていると、水沢はいろんな人にかっこいいとキャーキャー言われていた。 …本人は気取ることなんて全くなく、窓にとまったスズメをじっと見ていた。 なんていうか、ゲェーン…ってなった。 「藤原さん、藤原さん」 水沢は俺にこそっと呼んだ。 「ん?」 「藤原さんすごい見られてるよ」 …嫌味か? 「お前だろ。水沢柊夜くんかっこいーって言われてんぞ、そこら中で」 いやぁもう、なんていうか、悲しいよ。 みずさわくんはいいですねー、スズメ見ててかっこいいと言われるんだから。 「…え、何言ってんの!はは、藤原さんが言われてるのに!」 「は」 「?」 えぇぇー…笑ってるよこのひと。自覚ねぇのかよ…。 「いやまじで…水沢だろ…。」 「…えっ。僕?ありえないよ」 「なんでそこまで言えるんだよ」 「…だって僕スズメ見てたし…」 「…確かにそれは…」 それを言われたら答えようがないぞ…。 「…ふぅ…。そこのイケメンくん二人組体験入部ならこっちきて!そこにいられると関係ない女子がくるから!」 吹奏楽部の先輩らしきひとに呼ばれた。 「おい、早く行くぞイケメンくん。」 「うん。イケメンくんは藤原さんだけど、なんか怒られちゃったね。」 まだ言うのかよ、と思ったけどもう言い返す気にもならなくなった。
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