II. 夜

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「カラスは、確かにちょっと敵みたいな立ち位置だけど、確実に人気あるよ!藤原さんもしかしてカラス嫌いだったの?」 水沢は窓の外しか見ていなかった。 「なんの話だよ」 ばからしくなってくる。 「水沢さん!」 いきなり、1人の女子が手紙を差し出した。 「これ、受け取ってください!」 「…ん?…ありがとう」 おい、水沢くーん、他の女子たちまで、目がハートだぞ。 「あの!私も…これ!」 「私もこれ…読んでください」 「これも…」 なんだこのラブレターラッシュ。 水沢はていねいに一人一人にありがとうと返している。 俺は完全のけ者だ。 …と、思っていると、2人で俺の方に来る子達がいた。 「あの…藤原さん…これ読んでください」 「私もです!」 「え、まじで?…ありがとう…!」 素直にうれしかった。 もらった手紙の封筒を見てみると、"藤原さんへ"と女子の字で書いてあった。 これを書くのも、勇気出してくれたんだな、とじーんときた。 「藤原さん、帰ろ。」 気がつくと、水沢が横にいた。 きっとこいつは俺の何倍ももらってるんだろうけど。 俺はこれでいいって思った。
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