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「ん?水沢くん、どうかした?」
水沢の微かな笑い声に反応して、武田先輩が顔を上げる。
俺はそれと同時に後ろで手を組む。
水沢はそんな俺を見て無表情になった。
「や…特に…はい、何も。」
「そう?…あ、自己紹介でもしようか!」
自己紹介?
さっきやったよな?
「さっきもやった、って顔してるね?」
先輩がニヤニヤと俺達を見る。
「…正直、はい」
「まぁまぁ、じゃあとりあえず、ほら、ここ座って!」
ガタガタとイスを並べてくれる音が、廊下にまで響き渡る。
「「あ、すみません…」」
「いーのいーの!じゃあ、何から話そうか」
「「「………………………」」」
「だぁよね~!こうなるとは思ってた!大丈夫!じゃあこっちから質問するよ!」
「「は、はぁ…」」
「じゃあ…水沢くんから。水沢くんって、なんか…謎だから…。ピアノ何か弾いてくれない?」
え、ピアノ?
…質問じゃないんだ。
「?いえ…僕あんまりクラシックとか知らないので…」
「いやいや!クラシックじゃなくていいよ!…あ、ごめん、ちょっと嫌だった?」
「水沢。この間弾いてた曲なら弾けるんじゃねーの?」
「なになに!藤原くん、聴いたことあるの!?」
「あ、はい…」
思わず、口を挟んでしまったが、水沢は黙ってしまった。
「…悪い、勝手に」
水沢は、下を向いて首を軽く振った。
「あれでいいなら…弾きます」
そう言って顔を上げた水沢は、少し不安そうな顔だった。
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