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「ふじわ…朝日さ…あ、朝日」
「なんだよその呼び方」
「いきなり変えるのって難しいね」
「で、何かあったのか?」
後ろの席の柊夜は、いつもよりも気だるそうだった。
「いや…なんか」
「おはよー優音!」
急に、よく通る村本の声が聞こえてきた。
俺は反射的に村本の方を見た。
だからと言って特に何かあるわけでもないし、また柊夜の方に向き直った。
「あ、ごめん。ん?何?柊夜」
「………」
柊夜も、村本の方を見ていた。
俺と同じようにただ見ただけなんだろうけど、柊夜が周りの人間を見るのって珍しい気がする。
「川上さんの声って…きいたことある?」
「え、声?川上さんの?」
なんだ、村本じゃなくて川上さんを見ていたのか。
「クラスの人の声みんなきいたことあるけど、川上さんはない」
「ま、まぁ…確かにそうかもしれねーけど…」
「一番きれいな声してそうだから」
「まぁ…そうかもしれねーけど」
柊夜が女子の話…?
「けど、何?」
「柊夜の声聞いたことねーやつ多分いっぱいいるよ」
「わぁ」
「はぁ」
俺はなんかため息がでた。
「あ、そうだ武田先輩もニックネームで呼ぼう」
「えっ、急に何言ってんの塩顔イケメン」
「しお?」
「…確かに塩じゃねえな……、いや、先輩だぞ?」
「そっか、だめ?」
いや…あの人なら先輩さえつければ喜ばれそうな気がしてきた。
「武ちゃん先輩」
「武ちゃん先輩…!」
「あ、言ってみただけだからな!?」
「武ちゃん先輩…そんな感じするよあの人」
まぁいっか、武ちゃん先輩で。
すいません、と心の中で謝る。
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