II. 夜

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ー 「ふじわ…朝日さ…あ、朝日」 「なんだよその呼び方」 「いきなり変えるのって難しいね」 「で、何かあったのか?」 後ろの席の柊夜は、いつもよりも気だるそうだった。 「いや…なんか」 「おはよー優音!」 急に、よく通る村本の声が聞こえてきた。 俺は反射的に村本の方を見た。 だからと言って特に何かあるわけでもないし、また柊夜の方に向き直った。 「あ、ごめん。ん?何?柊夜」 「………」 柊夜も、村本の方を見ていた。 俺と同じようにただ見ただけなんだろうけど、柊夜が周りの人間を見るのって珍しい気がする。 「川上さんの声って…きいたことある?」 「え、声?川上さんの?」 なんだ、村本じゃなくて川上さんを見ていたのか。 「クラスの人の声みんなきいたことあるけど、川上さんはない」 「ま、まぁ…確かにそうかもしれねーけど…」 「一番きれいな声してそうだから」 「まぁ…そうかもしれねーけど」 柊夜が女子の話…? 「けど、何?」 「柊夜の声聞いたことねーやつ多分いっぱいいるよ」 「わぁ」 「はぁ」 俺はなんかため息がでた。 「あ、そうだ武田先輩もニックネームで呼ぼう」 「えっ、急に何言ってんの塩顔イケメン」 「しお?」 「…確かに塩じゃねえな……、いや、先輩だぞ?」 「そっか、だめ?」 いや…あの人なら先輩さえつければ喜ばれそうな気がしてきた。 「武ちゃん先輩」 「武ちゃん先輩…!」 「あ、言ってみただけだからな!?」 「武ちゃん先輩…そんな感じするよあの人」 まぁいっか、武ちゃん先輩で。 すいません、と心の中で謝る。
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