II. 夜

19/22
前へ
/337ページ
次へ
「優音~!も~何やってんの!かわいいなぁ!」 また村本の声が響いてくる。 「ねぇ、ちょっと里佳うるさいよ!」 次は抑えめの新井の声。 「あっはー、"はい、ねー。すいません、でしたね。"」 「ね、やめて、そんなそっくりな世界史の金田先生の真似しないでいいから!」 「あははは!私は神ですから」 「…はいはい。神ですね」 2人の会話はテンポ良く進む。 そしてその間には川上優音がきょとんとした顔で黙っている。 「柊夜」 柊夜が珍しくずっと女子の方をみているから、俺は軽く肩を叩いた。 「…………」 ……また無反応かよ! 「柊夜?おい、柊…」 柊夜は、ほんの少し頬が赤かった。 「あ、な、なに…?」 ……いや…。 「………何、柊夜、変」 「え…」 そうだ、変なんだ。 柊夜はいつも女子を苦手とか言って、見ることもしない。 そんなやつが吹奏楽部に行くことも。 そんなやつが女子を見ることも。 そんなやつが女子の話をすることも。 全部、おかしいんだ。 "朝日…川上さんの声聞いたことある?" ふと、さっきの柊夜の言葉が蘇る。 川上さん…? 川上優音…? 芸能人でもおかしくないくらい可愛いけど、決して目立たない彼女。 そんな彼女は、この柊夜を惹き付けるほどの何かを持っているのか?
/337ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加