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ずっとずっと君に聞きたかった。
──何故僕だったのか。
他にもいたはずだ、それも彼女の近くに。
ずっと気になっていたんだ。
「……あ、じ、実は…」
どうやら話してくれるみたいだ。
『…………』
僕は黙る。
「あ、貴方が本を、お爺様の本を、読んでいたので…」
本?
…確かあの時僕は吉良科城太郎の本【愛を統べるもの】を読んでいたはずだ。
『それってまさか、吉良科城太郎?』
そんなはずない…
「はい」
そんな…偶然…
『待って待って、君の、お爺様って言った?』
「はい、私のお爺様は作家の吉良科城太郎ですよ?」
知らなかったですか?と彼女は言う。
(知らなかった……)
ましてや吉良科城太郎に孫がいたなんて…
『でも、だからって僕に渡す?』
理由が見つからない。
「お爺様が《大切なモノは信用できる相手に渡しなさい。この本を渡す時は私の本を読んでくれる読者に預けて欲しい。》そう言われたので…」
『……へぇ』
嬉しかった。
僕達読者を愛してくれていることが
その言葉だけでわかった。
それだけで理由は十分だ。
とりあえず本を彼女に渡す。
───あぁ、それと
『ねぇ名前は?』
「え?わ、私ですか?」
君以外誰が…
『……そーだけど』
少しイライラして答える。
流石に察したのかあわあわして
「き、吉良科 華夜、です」
そう言った。
《きらしな かよ》
いい名前だと思った…
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