3人が本棚に入れています
本棚に追加
家を出て真っ直ぐ進んだところを右へ
そのまま道なりに歩いて行く。
この道を通るのは2回目だ。
(あぁ、やけにうるさい…)
何があるのか分からないが
僕は不愉快だったのでヘッドフォンをした。
まぁそれが間違いだったらしい。
ばっしぃぃーん!
子気味いい音が響く。
『ヴっっ!ごほっごほっ』
元来打たれづよくない僕は勢いよく咳き込む。
背中が痛い…
『なんだよ、《那智》』
《紅宮 那智》
《あかみや なち》
僕が唯一心を許せる相手だ
まぁでも許せる事と許せない事は勿論ある訳で、
『僕なんかした?』
不機嫌全開で言い放った。
「いんや?ただ入学初日でもう先輩に気に入られてるのが気に入らないだけ。」
ただ、の理由が不毛。
『ふざけんな』
1発殴ってまた歩きだした。
…
……
………
門をくぐったところで
ふと、懐かしい匂いがした。
(あぁ、これはあの冬の)
と思った瞬間、はっとした。
いるのではないかと
あの本を僕に《預けた》《彼女》が、この学校に…
………いた。
風に靡いた長い髪が彼女の肩を滑って後ろへ流れる。
一通りの動作に見とれる男いや、女も沢山いるだろう。
(僕はそんな事にならないけどね)
スッと前に出た。
鞄から本を取り出して渡そうとした。
が、彼女はあろう事か僕の腕を掴んで引っ張ってきた。
『え、ちょっと?』
ぐいぐい引っ張っられて着いた先は
人気のない校舎裏だ。
僕は問いかける。
『本、でしょ?』
彼女は、口を引き結んで頷く。
「あ、あのありがとうございました。」
そうだ。
聞きたいことがあったんだった。
『…ねぇ』
「は、はい」
僕がずっと気になっていた質問を彼女に聞かなければ。
『ねぇ、なんで僕だったの?』
最初のコメントを投稿しよう!