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二人が振り向くと、そこには、頭から足先を垂れるように覆う大きな布で左半身を隠した青年が、立っていた。
「おお、生きとったんか」
農夫が驚いたような声を上げた。
青年は農夫に一瞥もくれず、奥津を睨むように見据えたまま左足を引きずって近づいて来る。
「ああ、生きとったよ。見りゃわかろうが、体の半分は動かんようになってしもうたがな」
それを聞いて奥津は、彼が農夫の言っていた蜂退治に行った若者なのだと察した。
「その体、蜂にやられたんか」
奥津が問う。
「そうじゃ。これを見てもあんたは退治に行く言うんか? 俺は運よぉ逃げれたけどな、だいたいの人間は死ぬらしいけぇ、あんたもただじゃ済まんで」
奥津の目が僅かに見開く。
「ほんで、武器は何を持って行ったんじゃ?」
これだけ言えば恐れをなすだろうと思った青年は、奥津からの問いに意表を突かれた。
「ゆ、弓じゃ。近づく前にやろうと思ぅてな」
「おお、武器は間違っとらんな」
青年はあからさまにむっとした。
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