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 高木隆司には納得がいかない事があった。  それは息子の英介の事だ。  5才になる英介が、妻のスマートフォンにあるピアノのアプリに熱中してしまったのだ。  そこで隆司は本物のピアノを買ったのだ。  スマートフォンにつきっきりでいることよりも、せっかくピアノに興味を持ったのだから、本物のピアノを思う存分弾いて欲しいと思ったのだ。  しかしピアノを買ってから、最初のうちは何度か弾いていたが、近頃はピアノの前に座っているところを見ることもなくなった。  そこで隆司は英介に聞いた。 「おい、何で最近ピアノを弾かないんだ?」 「だってこのピアノ凸凹して変なんだもん」  その返事を聞いて隆司は愕然とした。 「嘘……だろ……。いくらしたと思っているんだよ」  ほとんど声になっていなかった隆司のつぶやきは、英介には届かなかった。  スマートフォンアプリのピアノに慣れた英介にとってはピアノとは鍵盤が平らなものだったのだ。  仕方がないので隆司は、趣味でピアノを始め、20年かけてプロデビューするのだった。 「嘘……だろ……。親父が?」
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