出逢い

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もっと早くに出逢えてたら。 私と亮くんの運命も変わっていたのかな。 私と亮くんが出逢ったのは、高校3年生の春。 高校2年生までは家庭教師を親につけられていた。 ある時、母から、S予備校のT大学コースがあるから受けてみないか、と言われ、受けてみた。 合格し、毎日、放課後に御茶ノ水まで通うことになった。 御茶ノ水は高校の隣の駅で、通うのは楽ではあった。 席は決められており、隣は覚えていなかったが、後ろの席に大きな男子高校生がいた。 なぜか、気になり、授業中もよく後ろから、話しかけられるようになった。 「きみ、家どこ?」 「国立よ」 「へー、遠いのかな」 「そうね、近くはないかも」 彼は、亮くんではない。 なんとなく、模試で、外会場の大学などでも席が近いため、お弁当を一緒に食べるようになった。 彼の名は愼。 都立の高校に行っているらしい。 咲は私立の学校の友達しかいないので、なんとなく違う世界に足を踏み入れたような気がしていた。 ある時、予備校の帰りに一緒に電車に乗って帰ろうとした時、愼の知り合いが数人どどっと乗ってきた。 「おー!」 女子も数人の中にいたが、3人の男子が愼に声をかけた。 咲は「???」という顔をした。しかし、次の瞬間、電気のような衝撃が走った。 そして、なぜか、しまった、という思いが身体中を駆け巡った。 亮くんとの出逢いだった。 「あれ、愼、だれ?この子」 「あ、」 「最近ね」 「ふーん」 あとから聞いた話だが、亮くんも、この時、電気が走ったらしい。 でも、なんとなく、愼に遠慮して本心を出せなかったと。 二人とも、心の衝撃を口にしてしまえばよかったと、後悔することになる。 それからは、毎日、咲は愼、亮らの仲間と予備校が終わると予備校を出た通りで集合してから御茶ノ水駅まで歩いて、電車に乗るようになった。 咲には同じ高校の友達も3人ほど予備校に来ていたが、授業の休み時間に話すことはあっても、帰途を一緒にすることはなくなった。 咲は自分で気づいていた。入口は愼だけど、いつの間に、亮に対して今まで抱いたことのない感情を抱いていた。 その感情がこの後、とてつもなく自分の心の中で膨らみ続けていくことになるとは思いもしなかった。
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