1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
高校の夏休みが始まり、予備校の夏期講習の講座が次々と始まった。
咲の夏期講習の最初の講座は英語。
知っている顔はちらほらいたが、休み時間に少し話をするくらいで、淡々と授業を受けた。
翌週の2つめの講座は国語。
咲は、早く世界史が始まらないかなと待ち遠しく思っていた。
世界史の講習は翌々週。8月に入ってからだった。
予備校が毎日あったからか、毎日会えるということで、予備校で知り合った仲間と連絡先を交換していなくても不便さを感じなかった。
でも、夏休みに入ると、通常の毎日の授業がないため、毎日会えていた顔に会えなくなり不便さを感じてはいた。
受験生なのだから、その時間は勉強に当てればいいのにと思ったりしたけれど。
そして、とうとう、世界史の講習が始まる週になった。
いつもよりも早く行ってみて、席順を確認すると、真ん中の列の真ん中あたり。
彼はどのへんだろう。まだ来ていない。
しばらく座ったままで見回しながら世界史のテキストをパラパラとめくっていた。
すると、教室の前の入口から、入ってくる人がいた。
亮だった。
席表を確認して、教室を見回し、一番前の席に座った。
一番前なんだー、話しにくいなと思いながら、テキストをまたパラパラとめくり、また前方を見ていると、亮が後ろの方を振り返って何かを探しているような目つきで見回した。
と、授業が始まるチャイムが鳴った。
好きな世界史の講師の授業なので、黒板にカツカツとチョークの音を立てながら、几帳面に端から年表のように書いていくのを、咲も効率的にノートに書き写していきながら、たまに目の端に最前列に座っている亮を意識していた。
授業が終わったら、亮に話しかけに行こうっとと思いながら、授業を受けていた。
1時間目が終わって、筆箱にシャーペンを片付けてふと前方を見ると、亮が消えていた。
トイレにでも立ったのかなと、咲は席を立ち、教室の後ろのドアから廊下へ出てみた。
すると、廊下の開いている窓から亮が、外を眺めていた。
咲はそばに寄っていき、亮の顔をそっと覗き込んでみた。
「あー。おはよ」
亮は外を見ていた目を咲のほうへ向き直って、笑顔を向けた。
「一番前なんだね、席」
咲は話しかける言葉を探しながら、ちょっとはにかんだ。
今まで、亮と話す時は、だいたい、周りに友人達がいるので、二人で話すことがあまりないので、少し緊張した。
「そうなんだよ。いいような悪いような。声はよく聞こえるけど、黒板見るのは首が痛いよな」
二人で話をすることが、緊張しながらも、ドキドキしながら、嬉しさでいっぱいな咲だった。
そうこうしているうちに、チャイムが鳴り、名残惜しいような気持ちで席に戻った?
最初のコメントを投稿しよう!