「不思議な森」

2/2
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
あの森は、不思議な場所だ。 駅に出るには近道なのに、だれも通ろうとしない。 きっとおばけでも出るんだろう。学校ではもっぱら、そんな噂だった。 だけど私たちはその日、そんなのに構ってられなかった。 期末テスト当日なのに、勉強会と称し遊び呆けていたせいで、揃って寝坊したんだ。 森に入る瞬間は流石に怖くて、私は二人とつながる両手をぎゅっと握りしめた。 だけど、朝の森は案外明るいし、水たまりがキラキラして、逆に綺麗なくらいだった。 夢中で走り抜けた結果、なんと普段より早く駅前に着いた。 すごく焦っていた反動もあって、はしゃいだ私たち二人は、つないでいた右手でハイタッチをした。 おばけも出なかったし、近いし、みんな何で使わないんだろう? あ、もしかしたら、道が悪いからかも? 「じゃ、行こっか」 「うんー」 にしても早かったな、と、時計をはめた左手を見たら、なぜだか引っかき傷がたくさんついていた。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!