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あの森は、不思議な場所だ。
駅に出るには近道なのに、だれも通ろうとしない。
きっとおばけでも出るんだろう。学校ではもっぱら、そんな噂だった。
だけど私たちはその日、そんなのに構ってられなかった。
期末テスト当日なのに、勉強会と称し遊び呆けていたせいで、揃って寝坊したんだ。
森に入る瞬間は流石に怖くて、私は二人とつながる両手をぎゅっと握りしめた。
だけど、朝の森は案外明るいし、水たまりがキラキラして、逆に綺麗なくらいだった。
夢中で走り抜けた結果、なんと普段より早く駅前に着いた。
すごく焦っていた反動もあって、はしゃいだ私たち二人は、つないでいた右手でハイタッチをした。
おばけも出なかったし、近いし、みんな何で使わないんだろう?
あ、もしかしたら、道が悪いからかも?
「じゃ、行こっか」
「うんー」
にしても早かったな、と、時計をはめた左手を見たら、なぜだか引っかき傷がたくさんついていた。
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