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そっと俺にではなく、昂に確認していた。
「遊部さんは、通過者ではないので、見分けがつかないのです」
昂が小声で、神代に説明する。
「異物(インプラント)なのに、通過者ではないのか……本当に面白いね」
御幸の子供が来ると、犬小屋の中に入って眠っていた。
「報酬はこの犬小屋でいいや。ここの異物(インプラント)は安いのばっかりだしね」
そうなのか、異物(インプラント)の価値は分からないが、人が生きたことに、価値の上下があったのか。
「どうなると高価なのですか?」
「…………必死で迷った者かねえ。君たちは、恋だと言ったけどさ、俺が好むのは、必死で一杯の異物(インプラント)だな」
俺も、それは好ましいと思う。人間は、必死に迷い、選んでまた迷う。沢山考えなくては生きてゆけない。
「生計はしいたけ農場ですね。異物(インプラント)は森を守るための資金ですか?」
それならば、秘蔵の異物(インプラント)がある。
「これ、そこの昂を飲み込んだ指輪で、強力な外部型の異物(インプラント)です。生葬社でも扱いに困り、封印されていました」
神代は、指輪に触れた瞬間に指を切った。
「持ち手を選ぶわけか。これ、千年モノといって、かなり、希少だよ。いいの?」
丼池の家でも、昂の件があって、この指輪は持ち込み禁止であった。金を払っても処分したい逸品なのだ。
「性悪ですよ」
「でも、遊部君の前では、この宝石も乙女だよね」
宝石が恥じらうように、赤く光った。でも、魔女の指輪のような、ギラギラは変わっていない。
「俺にとっては、石ころですから」
「まあね、俺にも石ころだけどさ。この石は、森の魔女になれるね」
森の不審者避けになるという。
「番犬ですか。それに犬小屋」
商談は成立した。
「ところで、神代さんは、異物(インプラント)の情報で何かを探していると噂になっていましたけど、何の情報ですか?」
つい聞いてしまい、神代の表情が曇ったのを見た。
「御幸の子供を学校に行かせたい。でも、御幸と同じように、森から出ると、苦しんで気を失う」
犬小屋で眠っている子供を、俺はまじまじと見た。経験が少ないうえに、知識も多くはないが、この原因は、昂は痛がらないだけマシかもしれないが、昂と一緒ではないのか。
昂の場合は、偽りの異物(インプラント)を使用している。この子供の場合は、体外の異物(インプラント)から離れられない。
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