『森啼いて鳥死する時』

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 死んだ者が人を誘い、自殺へと、又、加害者へと誘ってゆく。 「百舌鳥さん、ここに碑とか建てられますか?戦争で亡くなった小学生や、防空壕で亡くなった人々を忘れないように」 「被害者は、どこにでもいるけどね。そうだね、建ててみようか」  結局、ここで青年を殺したのは、近所に住む引きこもりの青年であった。どういう経緯かは、全く分からないが、気付いていたら殺していたという。  黒いモヤモヤが更に固まってしまうと、人の負を活性化してしまうらしい。  俺は、生葬社に戻り、アケミの家を再度調べてみた。三島アケミは、公園で母親を失ったが生き抜き、親戚に引き取られる。その親戚の息子と結婚し、子供を三人もうけた。  その子供三人は、看護師と先生、そして一人は行方不明であった。  大学卒業後、家を飛びだし、そのまま行方不明になっていた。アケミは、最後までその息子の消息を探していたという。 「あ、遊部さん、公園の子の素性ですね。俺も手伝いましょう」  昂は、端末を持ってくると、行方不明者と、身元不明の遺体情報を確認していた。  かなりの失踪者の家族は、身元不明者に合致者がいても、自分からは認めないという。やや離れた肉親や、近所の人が、確認し似ていると家族に言って、やっと家族は動き出す。  生きていると信じている内は、生きているのだ。  又、カラスが鳴いていた。 「これは……」  身元不明の自殺者に、アケミの息子らしい人物がいた。身元を証明するものは、何も持っていなかったが、服装と年恰好が似ていた。どうして、必死に生きた親を見て、自ら死を選んでしまったのか。  遺書があったとされ、あれこれに悩んで解決できなかったとあった。 「母さんにつれられて、祖母が亡くなった場所に行った。すると、死んでいる沢山の人が、助けを求めていた。以後、自分は寝ても覚めても、周囲に人がいるのを感じた」  俗に言う、見える人であったらしい。昂は、情報を読んでから、ため息をついた。 「不便だね、こういう能力者はね……逃げるしかないよね」  見えると言われる人の、殆どが、本質は見えてはいない。生葬社にやってくる人のほとんどが、自分の脳で見えた世界を信じている。その曖昧な記憶は、容易な改ざんに応じてしまう。 「まあ、公園にご神木を育てているから、浮かばれない思いも、吸収されてゆくかな」
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