『森啼いて鳥死する時』

41/59
前へ
/59ページ
次へ
 死んで、アケミはやっと、母との約束の場所に戻って待つことができた。  でも、何かがひっかかる。公園の闇に手を貸した者がいるのではないのか。戦後、何年経過しているというのだ、今、活性化するには何か変化や理由があったはずだ。  公園の木の高くに、捧げものをする。そして、モヤモヤは活性化し、子供にも見えるようになってゆく。  師井や鞍馬が反応し、俺を公園から遠ざけた。師井や、鞍馬は通訳が欲しかった。  昂は何と言った?ご神木が、吸収すると言った。 「ご神木は、異物(インプラント)と同様なのか……」  神代のご神木は、あまりにパワーが強く、人の手には余る。新しいご神木を、公園は育てていた。 「通過者ではない思いも吸収する異物(インプラント)は、価値があったのか」  異物(インプラント)の価値は、どこかで公開しているのだろうか。 「昂、異物(インプラント)の価値って、どこで分かるの?」 「それは、闇サイトがありまして。高値取引のリストが公開されています」  どういうのが、幾らになったのかが、公開されているのだそうだ。殺された異物(インプラント)もあるので、秘密裡に公開されていた。 「ご神木の類はあるか?」 「あります。情報量の大小で、かなり価格が異なります。それに、ご神木で、物凄い高額のものもありますね」  俺も踊らされていたのか。公園に、俺がご神木を持ってくるとまで、予測されていたのだ。  でも、そもそも、神代へ行くように仕向けたのは、綾瀬だ。 「…………もしかして、綾瀬は回収屋に名前があるのではないの?」  昂が、まさかと言いつつも、名前を検索してくれた。 「あった……」  綾瀬が俺をだまして利用したのか? 「……綾瀬が、俺を騙したのか?」 「騙したのではないよ。俺は、肉体を手に入れる。回収屋がご神木を手にいれたら、肉体を渡すという約束をしてくれた」  本当に、綾瀬であるのか。生葬社に祀ったご神木を手に、綾瀬が立っていた。 「俺は、遊部が好きだ。誰にも渡さない。遊部の肉体を愛するのは俺なんだ」  綾瀬の言葉に、俺は首を振る。 「……いいや、綾瀬は死んだ」  今度は、綾瀬が首を振って否定していた。 「違う、俺は死んでいない!絶対に、遊部は俺が手に入れる!」  ご神木を持って、綾瀬は窓から飛び降りて行った。 「……綾瀬……」
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加