『森啼いて鳥死する時』

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 俺なのか、綾瀬が死んでいないと俺が思っていたから、こんなことになってしまったのか。アケミも約束の地に帰った。俺も、綾瀬と約束した地に戻らなくてはいけないのか。  百舌鳥がやってくると、窓の外を覗いていた。下の車の屋根が、激しくへこんでいて、綾瀬が物質的に存在していたことを認識する。 「あの車の弁償は、誰がするのかな」 「犯人は逃げていますよ」  そうだよね、生葬社は無関係だよねと、百舌鳥が逃げ腰になっていた。  「綾瀬君、逃げてしまったね。生葬社で雇おうかと思っていたのにね」  消えるまで保護しようとしたのであろう。でも、消えたくない綾瀬は逃げた。 「回収屋では、時には敵になるね」  それは、綾瀬が選んだのだ。 「俺が、綾瀬を消します。生きている事を葬って、死とする。生葬社の意味が、俺は、今、よく分かりました」  俺が綾瀬を消さなくてはいけない。俺が、生葬社に来たのも、きっと、運命みたいなものであったのだ。 「そうだね。君にも意味があったということだ」  百舌鳥は、頷くと、店長室に招いてくれた店長室には、歴代の店長が残した記録があった。どのようにして対応してきたのか、ノウハウは皆、本になっている。 「読んでもいいよ。俺は、まだ店長でいるけど、きっと、遊部君が次の店長なのだと思う」  生葬社というのは、人を選ぶのだそうだ。 「百舌鳥さん、引退なんてしないでくださいね」 「はいはい」  綾瀬が肉体を持ってきたとしても、俺は変わらない。もう、綾瀬が生きているなどとは、思わない。 「昂、俺、昼飯に行くけど、どうする?」 「行きます!」  やはり、喫茶店鮫島の肉ランチが恋しい。やっと、まともな昼飯が食べられる。  喫茶店鮫島に行くと、当たり前のように、鮫島は俺を客とは見ていなかった。 「ランチね、今日は売り切れしてね。賄いで我慢して」  今日の賄いは、カツカレーであった。 「はい」  ランチの時間が過ぎると、喫茶店鮫島の客はほとんどいない。そこで、カツカレーを食べていると、船生もふらりと現れた。船生は、大手通信販売会社の社員で、最近はここで葬祭の通販を担当している。ネット販売に慣れた世代では、この葬祭も受け入れられていた。 「船生さん、今、ランチですか?」 「マスター。何でもいいです。大盛りで三つ」  何故、三つなのかというと、船生を追うように、二人の男性がやってきた。 「はい。本日の賄いカレー」
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