『森啼いて鳥死する時』

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 磯田は、仕事の面となると、やや饒舌になるらしい。言ってから、真っ赤になって、口ごもってしまうが、情熱は持っているようだ。仕事の情熱というのは、悪い気はしない。 「そういう面では、売り手の言葉よりも、使用感を頼りに品物の購入をする感覚に似ていますね」 「そうですね、船生さんは、使用後の感想をかなりチェックします」  磯田は、船生を尊敬しているらしい。 「あ、降りる駅ですね」  磯田が、俺をエスコートしようとするので、友達感覚でとお願いする。俺は女性ではないので、気を使う必要はない。  受付を済ませると、会場を見て回る。華やかな会場で、ドレスの女性も美しい。磯田が、又隅に行こうとするので、俺の生い立ちをそっと教えた。  この容姿のせいで、両親が俺の遺伝子検査をしたこと。その後もギクシャクしていて、今は、絶縁に近いこと。家に俺の居場所はないこと。 「……俺は、どこに行っても場違いで、存在できない。ダメ人間ですよね」 「そ、そんな。貴方は少なくとも、いい人です!それに綺麗だ……」  磯田は、寺の住職の息子であった。気が弱く、人前で話す事ができずに、家を飛びだしていた。 「向かないと思ったことは、気付いたということでしょう。克服さえできればいいだけです」  こんな華やかな場所は、俺には向いていない。いつも、隠れていたい。でも、人目にはどこでも付いてしまうのだ。それを、避ける事ができない。  新車は布で隠れていて、その前に立つと、磯田が写真を撮ってくれた。 「布の下は、車ですよね。ちょっとだけ、見たいですね」  布に近付き、係員に怒られていると、本当のオープニングがやってきていた。  鮮やかな女性が、自分のドレスと同じ赤色の布を飛ばすと、下に真っ青な車が出てくる。布は綺麗に飛ぶように、風が補佐していた。  しかし、その布が、見事に俺に被さってしまった。 「苦しい」  警備員も慌てて、布を俺から取ろうとしていた。隙間から俺が顔を出すと、慌てていた磯田が、急に仕事モードに切り替わり、カメラを構え俺を撮った。 「青い瞳だ……」  すると、車と俺を入れて、次々とシャッターが押されていた。 「すごく、綺麗でかっこいい。一緒にいるのが、自慢になる」
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