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俺は、携帯電話を持っていなかったので、公衆電話を探すと、百舌鳥に電話を掛けてみた。
「百舌鳥さん、何かありましたか?」
「どうも、神代さんのところのご神木が消えたみたいです」
どういうことなのか。あのご神木は、人間の手に負える代物ではなかった。
「まさか、綾瀬……」
ご神木の力で、実体化した綾瀬は、力を欲しがっていた。
「遊部君、一旦生葬社に来なさい。それから、神代さんの所に行きましょう」
今日は有給であったが、問題が発生したのでは仕方がない。美奈代に電話をすると、丼池からも連絡があり、遅くなると言われていたという。
「俺も、今晩は戻れるのか分かりません」
美奈代は、詳しくは聞かない。美奈代も亭主で知っているのだろう。会社の問題を、家では説明はできない。
「行ってらっしゃい。昂も、生葬社に届けておきます」
美奈代の言葉が力強い。
生葬社に行くと、水早が弁当を食べていた。ご神木には、水早も詳しいという。
「とにかく現場に行きましょう」
丼池は、先に現場に向かっている。俺が昂を背負うと、昂は目を覚ました。
「ご神木ですね、夢で見ました」
ご神木がなくなり、御幸とその子供が弱り続けているという。
「水早さん、ご神木の代わりになるものってあるのですか?」
「弱っているのは、人柱だね?人柱とご神木は一体だから、片方だけでは存在できない」
ご神木には、周期的に人柱が捧げられていた。しかし、今期の御幸は人柱にはならず、ご神木も弱っていたらしい。
御幸だけでは、存在ができないということか。
「そんな……」
百舌鳥の車には、そんなに乗ることができないので、俺は社用車を使用することにした。昂も起きていたいので、助手席に乗り込む。
「美奈代さんが、弁当を持たせてくれましたよ」
先ほど、夕食は済ませていた。美奈代は、お重に入れて食事を持たせ、他に大きな水筒のようなものも入れていた。
「コーヒーだ。眠気覚ましですね」
コーヒーはありがたい。
出発すると、すぐに百舌鳥の車は見えなくなった。この車とでは、加速が違い過ぎる。
「カーナビでニュースがやっていますよ」
ワンセグ放送であろう。カラスの死骸が、あちこちで発見されたとあった。誰かが、毒を撒いているのではと、レポーターが追跡していた。
他に、車のイベントの映像があり、昂が騒いでいた。
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