『森啼いて鳥死する時』

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 親友だった俺達は、ここで終わったのだ。 「さよなら」  仏間を出ると、綾瀬の母親が、俺を見て驚いていた。 「遊部君。あら、来ていたの」 「はい、お姉さんが入れてくれました」  そのお姉さんは、庭で子供をあやしていた。 「お邪魔しました」  俺が帰ろうとすると、あれこれ奥から持ってきて、俺に持たせてくれた。漬物などもあって、食べろと言ってくる。 「これ、おいしいのよ。お母さんに持って行ってね」  テレビで見ているよと又言われてしまったが、何のことなのだか、俺には分からない。  最近も、綾瀬の写真が飛んだり、メダルが消えたりと忙しいのだが、慣れたそうだ。  赤ん坊が生まれ、面倒もあり、忙しいらしい。夜は疲れて、物音どころではない。爆睡の状態だそうだ。  綾瀬の家を出て、歩きながら景色を見ていると、実徳が自転車で追い抜かして止まった。 「兄さん?」  幻でも見たかのように実徳が驚き、俺を自転車の荷台に乗せてくれた。 「兄さんとニケツなど、考えたこともありません」  綾瀬とは、よく自転車でニケツした。道が悪くて、尻が痛くなった。  俺は駅まで自転車だったが、綾瀬は本数の少ないバスに乗っていた。だから、帰りはバス待ちの時間が長く、交代で走る約束で乗せて行った。  何もないけど、それだけで、面白くて楽しかった。そんな日が、卒業まで続くのだと、他を考えた事もなかった。 「現役高校生、頑張れ」  こんな風に昔も、荷台で声援を送って笑い合った。山に向かう田舎道は細くて、店さえも無かったが、何故かあれこれ話しては、面白くて笑った。 「兄さん、今日は泊まりますよね?聞きたいことが山ほどあります」 「答えるかは分からないよ」  家の前の坂道は、そのまま登れずに自転車を手で押して歩いた。  家に戻ると、消えた俺を昂が端末で探していた。 「ただいま」 「遊部さん、行き先を言ってから出かけてください。心配します」  次の予定は、墓参りであった。 「次は墓。でも、今日はパス」  明日、庭の花を持って墓参りに行こう。 「成己が、もう、家の虜ですよ」  丼池は、カメラを手に、柱に登り屋根に上り写真を撮っていた。天井の柱の一本、一本まで面白いらしい。 「母さんは、父さんも、話しで夢中だし」  俺の両親と、どういうわけか意気投合していた。 「じゃ、昂。穴場を案内してやるよ」
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