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「大丈夫ですよ。儀場さんが話をつけてくれました。生葬社は、常に一定量で異物(インプラント)を処理し、もう、暴落は置きません」
それならば、いい。俺の目から、涙が落ちると、困ったように昂がハンカチを出す。
「遊部さんは、いつも、死者に対して泣きますね」
昂は、俺用のハンカチを用意しているという。
「だから目が青いのですか」
目の色と、涙が関係しているのだろうか。
ここにあった学校は、老朽化で移転したことになっている。度重なる不審火で、職員がノイローゼになったともいわれる。
ここには、永遠に卒業できない子供たちがいた。彼らは、自分達の存在を認めて欲しがっている。
ここは弔ってもダメだ。彼らは、自分が死んでいることに気付いていない。
地面に音がすると、文字が浮かんでいた。
『自称、神という男がいる。そいつに頼め』
これも、綾瀬からのメッセージなのか。地面の文字は、昂も見ていた。
「探してみましょう」
昂は、タブレット端末を出すと、あちこちに問いかけていた。その返答が、すぐにやってくる。
「いましたけど、すごく……胡散臭い……」
自称神に、胡散臭くない人などいないであろう。
「しかも、こいつ、回収屋です」
昂は、元回収屋であり、回収屋の情報も入手することができた。
「依頼に対する支払いは、異物(インプラント)だそうです」
この業界、支払いに指定が多すぎる。通貨というものを知らないのであろうか。
「まあ、生葬社に戻って、百舌鳥さんに相談してからにする」
又、突っ走って迷惑をかけてはいけない。
生葬社に戻ると、儀場もやってきていた。儀場は、生葬社のオーナーであるが、あまり会社にいるということはない。儀場も得体の知れない人物であるが、その姿は、まるでモデルか役者のようであった。
「儀場様!!」
ここの事務室にいる婦人警官の方達は、儀場のファンでここの勤務を選んでいるらしい。
「百舌鳥さん、公園に行ってきました」
昂が公園の写真を見せ、俺は、拾ってきた異物(インプラント)を見せる。
「この土地、異物(インプラント)の回収では、この影を消せそうにありません」
転がる影は、苦しみの中にあり、人の声を聞こうとはしない。
「綾瀬は、自称、神のところに行けと言います。でも、それには異物(インプラント)が必要です」
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