第四章 夜啼く鳥が闇夜で見たもの

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 師井はランタンの他に、提灯も提げていた。 この提灯の中は、蝋燭であるのだが、これは素晴らしい。 光の拡散が広範囲で、ライトよりも周囲をムダに照らしていた。 でも、ほんのりでも地面が見えると安心できる。 「遊部君、提灯がいいのか……」  いつの間に、俺は提灯に寄って歩いていた。 「いい光です」  森にとって、この僅かな光は、焼石に水のようなもので、 周囲は真っ暗になっていた。 夜空の方が明るく、周囲は闇に包まれている。 「ぎゃああ、ぎゃあああ」  夜だというのに、カラスの声があちこちで聞こえていた。 カラスの声は、どこか人の叫び声に似ている。
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