239人が本棚に入れています
本棚に追加
「アケミ、先に行っているから。必ず来なさい」
母親が、アケミを残して去ってゆく。
しかし、入ろうとした防空壕は空襲で無くなっていた。
アケミは、どこに行ったらいいのか分からない。
必ず来なさいと言われたのに、行けなかった後悔の思いが、
ここで待つと変わってしまったらしい。
「……待っていなさいではないよね?来なさいであったでしょう」
アケミは生きて、家族を持ち、そして老いていった。
ここで、亡くなった子供ではなかったが、ここで家族を失ってしまった子供であった。
「行ってもいいの?」
今度は、耳で聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!