忌々しい

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「朔ちゃーん?」 「なんですか」 「誰のこと、考えてる?」 ああ、忌々しい。 すべてが、忌々しい。 こいつも、お前に抗えない自分も、この情況も。 「誰のことも」 「ふーん? 俺のことも考えてないわけえ?」 「......」 僕は君の姿ばかり追っているよ。 君がいても、いなくても。 お前に、シャツのボタンを外されている、今でも。 「嘘ついた。またあの子のこと考えてたよねえ」 「すみません」 「むかつく」 「ごめんなさい」 「黙れよ」 お前の唇が僕の唇に触って、舌が入ってくる。 お前となんか、したくない。 でも、拒めない。 君には、知られたくないから。 君が傷ついてるのに、僕はお前になされるがまま。 それに、 気持ちよくなってしまうんだ、僕は。 お前に触られて、感じる僕がいる。 お前が数えきれないほどの男を抱いてることなんて、慰めにもならない。 僕は、汚い。
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