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「やった、成功!!」
ハイタッチをと、右手を上げるチャコ。
「ホント、これ、来ちゃったのー?」
驚き喜びながらもどこか冷静なコッコ。
「ここ、何もないね。お店もない、道路もない。」
チャコの背景を眺めたコッコは、さっきまでいた場所との違いをつぶやいたが、それはリミットまであと10秒。
「いい加減ダルいから、早くタッチ!!」
右手を上げたまま、チャコはコッコを急かした。
もちろん歓喜を分かち合いたいチャコではあるが、コッコはこの場所にいられる絶対条件をすっかりお忘れのようだから。
この場所に来てから存在が確定する猶予は、33秒なのだ。
パチン、と2人タッチをすると、大きめの静電気のような火花が散った。
この場所この時に、存在が確定した瞬間だった。
2人は『使い切り透明ビニール傘型時間逆流装置』で、のどかな田園風景が広がる1953年の日本にやってきた。
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