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「あれ、あたし……?」
頬にぽたりと落ちた雫で私は目が覚めた。
見渡す限り岩、空洞。ここは洞窟のようだ。
小指のように小さな氷柱がある、ここは寒い地域の洞窟……?それとも地面の奥深くにある洞窟……?
私は自分のタブレットを確かめた。
「……画面が割れてて触れそうにないわね」
位置情報が知りたかったがタブレットが無ければ何も出来ない。
生憎ダンジョンから出る呪文、トラッピアは覚えていなかった、元々攻撃派の魔法使いなのだ。
歩くにしても魔物が出てくるかもしれない。しかし歩かなければこちらに食料はないのでまた倒れてしまう。どうしてここにいるのか、皆はどこにいるのか、自らの名前も分からず少女は歩く。
自分の感覚、知識はある。
でも名前が思い出せない、思い出そうとすると胸が痛む。
自分がどんな身分かも分からない、農民?商人なのかしら?
歩きながら考える。胸を押さえつけながらも懸命に。
もう6時間は歩いただろうか。
かなりの量を歩いた少女は酷く疲れていた。
歩いても歩いても景色が変わらず、視界がぼやけていく。
「……つかれた。」
胸の痛みと、記憶が戻らないもどかしさと、歩いても日の光が見えない寂しさで少女は限界に近い疲れがあった。
そして少女は目を閉じた。それはもう目を開けようとしない、静かな眠りだ。
愛しい
〝●●●●〟
愛しいよ、全てが欲しいよ。
ホシイヨ……
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