第1章 托鉢

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チリンと小さな鐘の音がした。玄関先に 墨染めの衣を着た僧侶が立ち、低い声で誦経 している。托鉢だ。網代笠をかぶり「連雀 僧堂」と書かれた頭陀袋を首から提げた 修行僧が布施を求めて時折こうしてやって 来る。素足に草鞋で寺から歩いて来て各家を 回り、また歩いて寺へ戻る。 受け取る布施の金額は決して多くはない。 托鉢するよりアルバイトでもしたほうが手に する金額は大きい。しかし、晴れの日も雨の 日も彼らは玄関先で誦経して家人が出てくる のを待つ。
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