第1章 托鉢

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祥子はこの家に来て初めて托鉢を知った。 今の時代、もっと効率よく大金を手にする 方法はたくさんある。何故苦しい思いをして わずかばかりの布施を乞うて歩くのか。 彼女は初めそう思った。だが、雨でも 変わらずに歩いてくる彼らが、濡れた衣と 脚で震えながら誦経するのを見て心を 打たれた。 季節や天候に拘らず、決められた通りの ことをする。それが修行なのだ。金額や 効率の問題ではなかったのだ。理由は ともかく真剣に行ずる姿は人の心を動かし、
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