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01/森のにおい
どこにでもありそうな町の、どこにでもありそうな高校。
教室に響くのは、教科書を読み上げる生徒の声と、扇風機の音。
生徒が文章を読み終えると教師が次の音読者を指名する。
「では次、藤村、2行目から。」
……
「…藤村。」
……
「藤村きつね!!!!」
「……んん~…」
「はぁ…もう結構、中谷くん読みなさい。」
主人公の名前は、藤村きつね。
ごく普通の高校生。
_____授業終了を知らせるチャイムが鳴ると、生徒たちは席を立ち次々と教室を出て行く
(移動教室か…面倒くさい…)
きつねは5分も経たないうちに教室から生徒はほとんどいなくなり、うす暗い教室に取り残された。
渋々机の中を探り 教材とノートを取り出し 筆箱を持って教室を出た
次の授業は別棟ということもあり、廊下は人気がない。
きつねが廊下を歩いていると突然背後から足音がして振り返った。
え…
そこにはきつねに背を向けて歩く男子が1人。
私、すれ違ったのに気付かなかったの…?
いや、いくらなんでも人気のない廊下で前から人が歩いてきたら気付くだろう。
まさか幽霊…?でも足はちゃんとあるしなあ…
なんて考えている間に少年は角を曲がって見えなくなってしまった
…まぁ、いいか。
きつねは前を向き直して教室へと足を進めた。
_____いつもなら気にしない所だけど、なぜか気になったのは 足音が聞こえた瞬間にほのかに森のにおいがした…から。
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